膵炎が慢性化したら漢方での治療も取り入れる

 
膵炎と漢方薬

膵炎(すいえん)は、インスリンの分泌等を司る膵臓に炎症がおこるもので、膵液に含まれている消化酵素が自分の臓器を溶かして破壊してしまうことによって起きます。

膵臓の位置

膵臓の位置

画像引用元:Minsガイドラインセンター

急性のものと慢性のものがあり、急性の膵炎は、アルコールの過剰摂取や胆石・胆嚢炎などがきっかけになる場合が多いです。
急性膵炎が発症すると、脂っこい食べ物を食べたり、冷たいものを飲んだりした時に上腹部痛が起こり、吐き気や冷や汗なども伴います。

一方、慢性膵炎は、アルコールの過剰摂取による急性膵炎を繰り返して慢性化する例や大酒飲みが最初から慢性膵炎になる例が見られます。
症状は急性膵炎のような症状が数週間から数ヶ月に繰り返して起きたり、上腹部の鈍痛が続いたりします。

治療は急性膵炎の場合は、西洋医学を優先しますが、慢性化した場合は漢方治療も行われます。

ただし、膵炎の再発防止には、規則正しい食生活を送ることが最も大切です。

膵炎の治療に用いられる漢方薬

体力がない、胃腸も弱い(虚証)

  • 柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)
嘔吐、腹痛、のぼせ、発汗
  • 安中散(あんちゅうさん)
腹痛、胸焼け、食欲不振、冷え性
  • 六君子湯(りっくんしとう)
吐き気、胃のもたれ、食欲不振

体力はふつう(中間証)

  • 小柴胡湯(しょうさいことう)
胸脇苦満感、下の白苔、口中の苦み
  • 四逆散(しぎゃくさん)
胸脇苦満感が強い。腹痛、腹直筋の緊張
  • 半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)
吐き気、上腹部のつかえや軽い疼痛。下痢

体力は比較的ある、胃腸も丈夫(実証)

  • 大柴胡湯(だいさいことう)
みぞおちが硬い。便秘、頭痛

※「虚証」や「実証」についてはこちら→「漢方薬の選び方~診断方法を知ろう~

ここからは膵炎についてもう少し詳しく学んでいきましょう。

早乙女タロウ

膵炎とは?

膵炎は膵臓から分泌される消化酵素が膵臓自体を消化してしまい炎症を起こしている状態の病気です。

膵炎には、急性膵炎と慢性膵炎があります。

急性膵炎

急性膵炎の原因

急性膵炎の原因の多くは、胆石症かアルコールの飲み過ぎです。
その中でも、アルコールが原因のものが多く見られます。

アルコール急性膵炎が最も多いのですが、アルコールが膵炎を引き起こすメカニズムは実はよくわかっていません。
他に、突発性膵炎と呼ばれる、原因不明の膵炎があります。

膵炎の初期症状とは?

みぞおちと呼ばれる上腹部の激しい痛みが特徴で、膵臓が背中の方にある関係上、背中にも痛みを感じることがあります。
肩の方まで痛みが及ぶケースもあります。

この痛みはどれくらい続くのかといいますと、急性膵炎が続いている間、痛みも続きます。
胆石の発作は、鎮痛薬でその痛みを治めるとその後、痛みも治まるのですが、膵炎の場合には違います。

前かがみになると痛みが多少和らぐので、エビのように体を丸めてしまうのも特徴です。

  • 腹痛
  • 吐き気
  • 嘔吐
  • 発熱

などの症状を伴います。

重症の場合には、脱水症状になります。
血圧も下がりショック状態になってしまいます。

胆石症などと間違わないように判断が必要

急性膵炎の場合、発作の状態では、血液中のアミラーゼが非常に高い値になるのが特徴です。
ですが、血液中のアミラーゼは数日経てば減っているので発作から検査までにどれくらいかかったかによって大きく影響が出ます。

尿に出るアミラーゼの値は、比較的長期間高い値が続くので急性期を過ぎた場合には尿中のアミラーゼ値の測定が重要になっていきます。

エラスターゼⅠという血液中の酵素は、アミラーゼ値が正常に回復しても高い値が継続します。

アミラーゼとは?

アミラーゼはでんぷん(糖質)を分解して糖にする酵素で、主に膵臓、睡液腺、耳下腺から分泌されます。この酵素は血液に混じった状態で全身を回った後、腎臓でろ過され、尿に排泄されます。
血液中、尿中のアミラーゼが増加した場合は、膵臓、睡液腺の細胞に異常があることを示しています。特に膵臓に炎症がある場合や膵管の通りが悪くなった場合に高い数値を示すため、膵炎や膵臓の腫瘍マーカー(病気の場合や程度を特定する検査)として有効です。

引用元:臨床検査AtoZ

重症化した膵炎では、血液中のカルシウム値の低下や腎臓障害が起こり、尿素窒素値やクレアチニン値、カリウム値などが高い値となります。

呼吸不全が起こると血液中の酸素濃度が下がります。

血液中の膵酵素値の上昇や強い上腹部痛は、胃や十二指腸潰瘍や胆石症、胆嚢炎、腸閉塞などの症状にも見られますので、しっかりと違いを見極めて判断する必要があります。

エコーやCTでの検査を行います。
急性膵炎の場合、膵臓全体が晴れて大きくなっています。

慢性膵炎

慢性膵炎の原因は?

慢性膵炎は、急性膵炎を繰り返して上腹部痛が起こる場合と、最初のうちからあまり痛みは訴えない場合の2つのケースがあります。

どちらの場合でも、慢性膵炎では腺房細胞という消化酵素を作る細胞が緩やかに破壊されて脱落し、繊維が増えて膵臓全体が固くなり、その機能を低下させて行きます。
肝硬変のようになる、といえばわかりやすいでしょうか。

慢性膵炎の原因は、アルコールの飲み過ぎが過半数です。
アルコール性慢性膵炎と言われています。

30%程度の患者さんは原因不明で、突発性慢性膵炎と言われています。

これ以外には、胆道系の病気が原因になっている場合があります。

慢性膵炎の主な症状

慢性膵炎になりたての頃は、80%程度の人が上腹部痛を訴えます。
背中の痛みを訴える人も半数程度います。

それ以外には、吐き気・食欲不振・腹部が張る感じ・体重減少などの症状が出ます。

急性膵炎と同じように、前にかがむと多少痛みが和らぐので、エビのように体を丸めるようになります。

膵臓の働きの低下が顕著になると、消化吸収が悪くなります。
その結果、下痢を起こすことがあります。

日本では、欧米に比べて下痢を訴える人は少なく、脂っこい食事が比較的少ないのが原因ではないかと考えられています。

患者さんのみぞおち部分を押さえると痛みを訴えます。

膵臓が硬化してくると、膵頭部を通っている胆管が圧迫されて狭くなるために黄疸を伴うようになります。
これが、膵臓がんによる胆道の圧迫によく似ていますので、その判断が難しいのです。

膵臓がんは進行性で、反対に慢性膵炎が原因の黄疸は軽くなったり、急性発作を起こしたりと、変動が起こる場合が多いようです。

慢性膵炎は、膵管内や膵実質(膵臓の臓器本来の生理機能を営む組織で膵管や血管を除く主要な組織)の中に結石(膵石)がたびたびあります。
膵石は膵液の流れを悪くし、うっ滞を起こし慢性膵炎をさらに悪化させます。

膵臓の中のインスリンを作る細胞の働きも悪くさせて糖尿病の合併も少なくありません。

慢性膵炎の診断は、

  • 腹部単純X線写真
  • CT検査

で膵石を確認すれば確実です。

膵石がない場合には、内視鏡での膵管造影にて膵管に異常がないか確認すれば診断は確実です。

エコーやCT検査で膵臓全体の歪みなども検査します。
最近ではMRIによる膵管の形状の検査も積極的に執り行われています。

膵炎の治療の注意点

絶食は、急性膵炎でも慢性膵炎でも急性発作時にもっとも大切なことです。

膵液分泌による刺激を避けるためです。
しかし、膵炎の箇所で滲出液が大量に失われるので脱水症状を起こします。
その間は、静脈点滴で水分補給や栄養補給を行います。

薬物療法には、

  • 自律神経を抑える薬
  • 膵酵素の活性を抑える薬

が使われます。

膵酵素の活性を抑える薬では、痛みがなくなり、症状の改善が見られるケースが多く見られます。
慢性膵炎の場合には、体の状態を見ながら漢方薬も治療に使うことができます。

細菌に感染している場合は抗菌薬が、電解質の異常やショックに関しては点滴輸液が行われます。

症状が軽い場合には、一般の医療機関でも治療ができますが、症状がなかなか改善されない急性膵炎の場合には集中治療が可能な医療機関への移動が必要になってきます。

その場合の治療としては、

  • 膵臓へつながる動脈から膵酵素の活性を抑える薬を直接注入する動注療法
  • 血液中から有害物質を取り去る血液浄化療法

が、有効な治療法とされています。

中には、外科手術が必要になるケースもあります。

原因がわかっていれば、一旦回復した時に、その原因を取り除いてあげれば膵炎は治ります。
しかし、原因がわからずになっている状態で、その原因が続いている場合には再発の恐れがあります。

アルコール性膵炎の場合には、禁酒が必須になります。
胆石がある場合には、胆石の治療が必要です。

全般的には、暴飲暴食をやめることが予防であり、治療法でもあります。

ここ最近では、

  • 膵管内にできた膵石を内視鏡下で削除
  • 体外衝撃波破砕装置(ESWL)で砕く

などの治療が行われています。

これによって、膵液のうっ滞が治り、腹痛が解消され、慢性膵炎の進行を抑えることができます。
保険は適応になっていませんので、専門の施設で受ける必要があります。

予防や再発予防

再発防止の場合には原因を取り除くこと、また、予防としても原因となることをしない、取り除く、ということが必要になってきます。

アルコールの飲み過ぎが原因の場合には禁酒、胆石が原因の場合には胆石の除去、とその原因を確実に取りのぞくことです。

再発の予防には、脱水症状に気をつけて、適度な水分補給が必要です。

また、脂っこい食事は避け、暴飲暴食はやめましょう。

 

いかがだったでしょうか。

暴飲暴食や、アルコールの飲み過ぎは体に何もいいことはありませんね。

ここでの症状の解説や診断方法などの解説はあくまでも目安の話です。

実際に膵炎の疑いや可能性のある場合には速やかに専門機関で診てもらうようにしてくださいね。

早乙女タロウ

 

 

 

 

 

 

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